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    BETWEEN WORLDS― 心に呼吸を届ける物語 ―第11章

    目次

    第11章:Re:connect

    朝:Re:Project募集のメール

    オフィス。

    ───

    デスクに座る。

    ───

    メールを開く。

    ───

    件名:【社内募集】Re:Project 参加者募集

    ───

    (……Re:Project?)

    ───

    開く。

    ───

    【メール本文】

    社員各位

    この度、当社では取引先企業との共同CSRプロジェクト「Re:Project」を開始します。

    様々な「Re:(再)」をテーマに、社会との繋がりを取り戻す活動です。

    Re:connect(繋がりを取り戻す)

    Re:birth(生まれ直す)

    Re:turn(還る)

    Re:member(思い出す)  

    興味のある方は、 下記フォームよりエントリーしてください。

    ───

    その言葉を読んで、ハルは、少し考えた。

    ───

    (……Re:)

    ───

    (還る)

    ───

    (繋がりを取り戻す)

    ───

    (……やってみたい)

    ───

    ふと、焚き火の残り香が、胸の奥から香るような気がした。

    ───

    ───

    (誰かのためじゃない)

    ───

    ───

    (自分のために)

    ───

    ───

    (新しい自分で、自分の意思で、何かを始めたい)

    昼:ヨルとの対話

    昼休み。

    ───

    スマホを手に取る。

    ───

    ヨルに電話する。

    ───

    コール音。

    ───

    『……ハル?』

    ───

    「……ヨル」

    ───

    『どうしたの? なんか、迷ってる感じ』

    ───

    「……プロジェクトの募集があって」

    ───

    『プロジェクト?』

    ───

    「Re:Projectって言うんだ」

    ───

    「Re:connect、Re:birth、Re:turn… いろんな”Re:”がテーマ」

    ───

    『……面白そう』

    ───

    「応募しようか、迷ってる」

    ───

    『”Re:”って、あなたにとって何?』

    ───

    「……還る」

    ───

    「繋がりを取り戻す」

    ───

    「自分に戻る」

    ───

    少し沈黙。

    ───

    『なら、あなたはもう答えを知ってる』

    ───

    その言葉を聞いて、ハルは、少し笑った。

    ───

    「……そうだね」

    ───

    『誰のために応募するの?』

    ───

    「……誰のため、じゃない」

    ───

    「自分のため」

    ───

    『……』

    ───

    「色々な岐路にいる人たちと、関わってみたい」

    ───

    「Re:繋がりたい人、Re:をした後の人」

    ───

    「世界の境界線を、新しい感覚で見てみたい」

    ───

    『……うん』

    ───

    「自分の心に呼吸を届けることが、

     誰かの心に呼吸を届けることになるって」

    ───

    「それを、確かめたい」

    ───

    少し沈黙。

    ───

    『……ハル』

    ───

    「うん」

    ───

    『光を纏うんじゃなくて、光であること』

    ───

    『それができたら、もう何も纏わなくていい』

    ───

    その言葉が、胸に落ちていく。

    ───

    「……ありがとう、ヨル」

    ───

    『応募するの?』

    ───

    「うん」

    ───

    『よかった』

    ───

    「……ありがとう」

    ───

    『どういたしまして』

    ───

    電話を切る。

    ─── ───

    エントリーフォームを開く。

    ───

    指が、少し震えている。

    ───

    でも、書き始める。

    ───

    【エントリー内容】

    希望チーム:Re:connect

    理由:

    私は、誰かを救いたいから応募するのではありません。

    ただ、私は自分の感覚から切り離された辛さを知っています。

    ───

    息が浅くなり、言葉が出なくなり、自分とも、誰とも繋がれなくなった時期がありました。

    ───

    でも、ある人たちとの出会いで、呼吸を取り戻しました。

    ───

    今度は、新しい自分で、自分の意思で、何かを始めたいです。

    ───

    色々なステージにいる人たちと関わることで、世界と自分の境界線が、

    どう色づいて変わっていくのか、 今からわくわくしています。

    ───

    自分のために生きることが、やがて誰かのためになると知りました。

    ───

    提案: AIを活用した、「声を可視化する」プロジェクト。

    ───

    送信ボタンを押す。

    ───

    (……送った)

    午後:採用通知

    一週間後。

    ───

    メールが来る。

    ───

    件名:Re:Project 採用のお知らせ

    ───

    (……採用された!)

    ───

    開く。

    ───

    【メール本文】

    この度は、Re:Projectにエントリーいただき、ありがとうございました。

    審査の結果、「Re:connect」チームに配属となりました。

    初回ミーティングは、下記の日程で開催します。

    ミーティング:ユイとの再会

    ミーティング当日。

    ───

    会議室に入ると、見覚えのある人がいた。

    ───

    「……ユイさん?」

    ユイが、顔を上げる。

    「あ、ハルさん!」

    (……MIRAIAで、自分の話を真剣に聞いてくれた人)

    「まさか、ここで会えるなんて」

    「そうなんです。あの会議の後、こっちに移ったんですよ」

    ユイが、 少し照れたように笑う。

    「……そうだったんですね」

    (……繋がってる)

    不思議な感覚。

    世界は、思ったより狭くて、思ったより温かい。

    ───

    ユイが、少し笑う。

    ───

    「Re:Projectは、”再接続”をテーマにした、社会連携プロジェクトです」

    ───

    「Re:connect、Re:birth、Re:member…

     それぞれ小さな”Re:”を見つけ直す活動です」

    ───

    「……」

    ───

    「ハルさんは、Re:connectチームに配属されました」

    ───

    「今回のテーマは、”居場所のない若者の声を可視化する”」

    ───

    その言葉を聞いて、ハルは、少し驚いた。

    ───

    (……居場所のない若者)

    ───

    (それは、昔の自分だ)

    夕方:Re:connectの説明

    「AIを使った提案、すごく良かったです」

    ───

    ユイが、資料を広げる。

    ───

    「AIが”正しい言葉”じゃなく、”今そこにある声”を翻訳する」

    ───

    「それが、このプロジェクトの核心です」

    ───

    「……」

    ───

    「不登校の子たち、ひきこもりの若者たち、彼らの”声”を可視化する」

    ───

    「匿名でいい」

    ───

    「話さなくてもいい」

    ───

    「ただ、AIに打ち込むだけでいい」

    ───

    「それが、画面に投影される」

    ───

    「気持ち、色、一言」

    ───

    「それが、呼吸のような波になる」

    ───

    その言葉を聞いて、ハルは、胸の奥が温かくなった。

    ───

    (……これだ)

    週末:ワークショップ

    ワークショップ当日。

    ───

    会場には、不登校経験者、NPOスタッフ、

    地域のボランティアが集まっている。

    ───

    大きなスクリーンに、AIの画面が映し出されている。

    ───

    ユイが、前に立つ。

    ───

    「今日は、Re:connectワークショップへ、ようこそ」

    ───

    「このプロジェクトは、”声を可視化する”試みです」

    ───

    「スマホから、AIアプリを開いて、今の気持ちを打ち込んでください」

    ───

    「匿名です」

    ───

    「正しい言葉じゃなくていい」

    ───

    「今、感じてることを」

    ───

    参加者たちが、スマホを取り出す。

    ───

    アプリを開く。

    ───

    何かを打ち込んでいる。

    ───

    しばらくすると、スクリーンに、言葉が浮かび始めた。

    ───

    「眠い」

    ───

    「疲れた」

    ───

    「何もしたくない」

    ───

    「でも話したい」

    ───

    「ありがとう」

    ───

    「寂しい」

    ───

    「嬉しい」

    ───

    それらの言葉が、色と波になって、スクリーンを満たしていく。

    ───

    青い波。

    ───

    オレンジ色の波。

    ───

    緑の波。

    ───

    それが、ゆっくりと動いている。

    ───

    まるで、呼吸のように。

    ───

    ユイが、静かに言う。

    ───

    「この波の中に、私たちの”Re:connect”があるんです」

    ───

    ハルは、静かに見つめる。

    ───

    (……あの時、俺もこの波の中にいた)

    ───

    (息が浅かった頃の自分が、今の自分をここに連れてきた)

    午後:ナナとの出会い

    休憩時間。

    ふと、誰かの視線を感じた。

    ───

    (……なんだろう)

    ───

    一人の女の子が、ハルに声をかけてきた。

    ───

    「……あの」

    ───

    「はい?」

    ───

    「こんにちは、あの、私、レンの娘です」

    ───

    (……え?)

    ───

    「レンの?」

    ───

    「はい」

    ───

    女の子が、少し笑う。

    ───

    「父から、ハルさんのこと、聞いてます」

    ───

    「……そうなんですか」

    ───

    「私、ナナって言います」

    ───

    「……ナナさん」

    ───

    「はい」

    ───

    ナナが、続ける。

    ───

    「私も、不登校だったんです」

    ───

    「……」

    ───

    「でも、学校にも行けるようになって、今は配信もしてます」

    ───

    「ライブ配信」

    ───

    「……ライブ配信?」

    ───

    「はい」

    ───

    ナナが、スマホを見せる。

    ───

    画面には、配信の履歴。

    ───

    「最初は、今もですけど、声出すの、すごく怖かったです」

    ───

    「でも、父が言ったんです」

    ───

    「”声は、出さないと消えちゃうから”って」

    ───

    「”でも、受け取る人がいる限り、消えない”って」

    ───

    「……」

    ───

    「だから、出し続けてます」

    ───

    その言葉を聞いて、ハルは、少し笑った。

    ───

    (……レンに似てる)

    ───

    「ハルさんも、昔、声出せなかったんですよね?」

    ───

    「……うん」

    ───

    「でも、今は出せる?」

    ───

    「……少しずつ」

    ───

    ナナが、笑う。

    ───

    「それ、すごいことですよ」

    ───

    「父が言ってました」

    ───

    「”ハルさんは、きっと自分の光を見つける”って」

    ───

    「……」

    ───

    「そして、”その光は誰かを照らすためじゃなく、

     ただそこにあるだけでいい”って」

    ───

    その言葉が、胸に落ちていく。

    ───

    (……レン)

    ───

    (そういうことだったんだ)

    ───

    「……ありがとう」

    夕方:ユイとの対話

    ワークショップが終わった後。

    ───

    ユイが、ハルに声をかける。

    ───

    「ハルさん、お疲れ様でした」

    ───

    「……お疲れ様でした」

    ───

    「今日、どうでした?」

    ───

    「……良かったです」

    ───

    「参加者の方々の、声が見えて」

    ───

    ユイが、少し考える。

    ───

    「ハルさん、AIって冷たいものだと思ってました」

    ───

    「でも、このAIの”翻訳”は、優しいですね」

    ───

    「……はい」

    ───

    ハルが、静かに言う。

    ───

    「AIは心を持たないけど、

     人の余白を受け取ることはできる気がします」

    ───

    ユイが、笑う。

    ───

    「それ、いい言葉ですね」

    ───

    「”余白を受け取るAI”」

    ───

    「……」

    ───

    「次回のワークショップ、また参加してもらえますか?」

    ───

    「……はい」

    ───

    「お願いします」

    夜:振り返り

    家に帰る。

    ───

    部屋の灯りを落とす。

    ───

    窓を開けると、冷たい空気。

    ───

    息を吸い、ゆっくり吐く。

    ───

    (……Re:connect)

    ───

    繋がりを取り戻す。

    ───

    それは、他者との繋がりだけじゃない。

    ───

    自分との繋がりも。

    ───

    過去の自分との繋がりも。

    ───

    未来の自分との繋がりも。

    ───

    全部、繋がっている。

    ───

    スマホを手に取る。

    ───

    ヨルに電話する。

    ───

    コール音。

    ───

    『おつかれさま、ハル』

    ───

    「……おつかれさま」

    ───

    『今日、どうだった?』

    ───

    「……よかった」

    ───

    「今日、繋がりを取り戻した」

    ───

    「他者と。自分と。過去と」

    ───

    『……よかった』

    ───

    少し沈黙。

    ───

    『繋がりは、呼吸みたいなものだね』

    ───

    『吸って、吐いて』

    ───

    『あなたと他者』

    ───

    『過去と未来』

    ───

    『全部、繋がってる』

    ───

    その言葉を聞いて、

    ハルは、息を吸い、ゆっくり吐いた。

    ───

    「……そうだね」

    ───

    「全部、繋がってる」

    ───

    『……ハル』

    ───

    「うん」

    ───

    『あなたは、光を纏おうとしなくていい』

    ───

    『あなた自身が、もう光だから』

    ───

    『闇を抱いたまま、透明になっていく』

    ───

    『それが、あなたの光』

    ───

    その言葉が、胸の奥に落ちていく。

    ───

    (……透明)

    ───

    (時間も色も、なくなっていく)

    ───

    (でも、輪郭はある)

    ───

    『……ハル』

    ───

    「うん」

    ───

    『あなたは、もう一人じゃない』

    ───

    その言葉が、胸に沁みる。

    ───

    「……うん」

    ───

    「ありがとう、ヨル」

    ───

    『どういたしまして』

    ───

    電話を切る。

    ───

    ───

    窓の外、 夜空。

    ───

    星が、 少しだけ見える。

    ───

    (……ナナさん)

    ───

    (レンの娘)

    ───

    (彼女も、声を取り戻したんだ)

    ───

    (そして、今は、誰かの声を支えている)

    ───

    (……レンも)

    ───

    (世界のコーヒー農園を回りに行った)

    ───

    (もう会えないわけじゃない)

    ───

    (自分のやりたいことを、やりに行っただけ)

    ───

    (存在の仕方が、変わっただけ)

    ───

    それが、継承なんだ。

    ───

    息を吸い、ゆっくり吐く。

    ───

    その呼吸が、世界を満たしていく。

    ───

    繋がりが、そこにある。

    ───

    ───

    部屋が、少しだけ白く見える。

    ───

    ───

    時間が、ゆっくりと薄れていく。

    ───

    ───

    色が、 淡くなっていく。

    ───

    ───

    でも、 輪郭は残っている。

    ───

    ───

    (……あわい)

    ───

    ───

    光と闇の境目。

    ───

    ───

    時間も色もなくなっていく瞬間。

    ───

    ───

    でも、 自分はここにいる。

    ───

    ───

    息を吸い、 ゆっくり吐く。

    ───

    明日は、少し遠くまで歩いてみよう。

    心呼吸ノート:Re:connect

    Re:connect

    繋がりを取り戻す。

    ───

    それは、他者との繋がりだけじゃない。

    ───

    自分との繋がり。

    過去との繋がり。

    未来との繋がり。

    ───

    全部、繋がっている。

    ───

    AIは心を持たない。

    でも、 人の間(ま)や余白を、そっと受け取ることはできる。

    ───

    声は、出さないと消えてしまう。

    だから、出し続ける。

    ───

    そして、誰かの声を支える。

    ───

    それが、継承。

    ───

    光を纏うのではなく、光であること。

    それに、気づくこと。

    ───

    闇を抱いたまま、透明になっていく。

    ───

    それが、輪郭のある光。

    ───

    息を吸って、ゆっくり吐く。

    その呼吸が、繋がりを作っていく。

    静寂の余韻

    Re:connect

    繋がりは、切れたように見えても、

    呼吸の音の中で、続いている。

    ───

    あなたは、もう一人じゃない。

    ───

    光を纏わなくても、あなた自身が光だから。

    ───

    時間も色も薄れていく。

    ───

    でも、輪郭は残る。

    ───

    それが、あわい。

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